国立国会図書館(NDL)オンラインのデジタルコレクションは、自分のような在野で細々やっている人間にとってすでに手放せないシステムとなっている。
使い方としては、用途に応じて単語を検索し、必要なページをお気に入りに入れPDF化→DLしてローカルで読む、ということが多い。
ただ、このシステムの良いところは、読む資料だけではなく、絵画資料も多数軽公開されている点にある。能が好きな人でもそうでなくても、美麗な絵師や写真技術による能楽の記録をみることは楽しい体験になるにちがいない。そこで下記に、自分が渉猟できた能楽の絵画・写真系の資料をあげてみる。この記事にたどり着いた方が、これを縁としていろいろな資料を探したり閲覧するきっかけになれば幸いだ。
以下、今回は利用者登録なしですぐに閲覧できる資料に絞ってご紹介する。
言わずとしれた河鍋暁斎の能画
河鍋暁斎は近年人気が高く展示会などでご存じの方も多いと思う。彼は様々な図案を書いたが能・狂言絵もまとまった数遺している。(それだけをまとめた図録も販売されているほど)その作品も、デジコレならワンクリックで閲覧できてしまう。これだけでももうすごいことだ。
[河鍋]暁齋 筆『能画圖式』乾,蓬樞閣,[18--]
[河鍋]暁齋 筆『能画圖式』坤,蓬樞閣,[18--]
上記、能画と題しているものの多くは狂言の絵である。こちらに収められた絵を含む、プロトタイプ版のような画集(下記)の方には、謡曲のスケッチも多く載る。こちらはカラーでないものの、手蹟が感じられてこれはこれですごく味がある。
『猿楽図』,写
暁斎の娘・河鍋暁翠の能画
河鍋暁斎の娘は、彼と同じく浮世絵師であった。号は暁翠。この人もまた能画を多数残している。(彼女は、近年発表された澤田瞳子氏の小説『星落ちて、なお』によって一躍有名になった気がする)
暁翠の作品もデジコレで観ることが出来る。残念ながらカラーではないものの、元の絵が線画なので観る分には問題ない。
河鍋豊 画『能楽図絵』1,江島伊兵衛,明32.11
河鍋豊 画『能楽図絵』2,江島伊兵衛,明32.11
能楽絵師?月岡(坂巻)耕漁
暁斎・暁翠親子は、それぞれの作品群の中に能画がある、という印象だが、次に挙げる月岡(坂巻)耕漁は能・狂言絵が画業の中心にあったような印象を受ける作家である。能楽を描いた人としてはおそらく一番有名であろう。絵のこだわりや美麗さもすさまじいものがある。
ちなみに、耕漁の絵をパラパラみていると、描き方がいくつかのパターンに分かれていることに気付く。1)背景の能舞台を含めてすべて忠実に描いたもの 2)能舞台を細かく描かず人物にフォーカスしたもの 3)背景に能に関連する意匠を散らして遊んだもの(※本記事最下部に掲載の図案がそのパターン)。どの謡曲がどのパターンで描かれているか、じっくり見ていくのも面白いかもしれない。
耕漁 [画]『能樂圖繪』前編 上,松木平吉,[1901]
耕漁 [画]『能樂圖繪』前編 下,松木平吉,[1898]
耕漁 [画]『能樂圖繪』後編 上,松木平吉,[1899]
※後編 下 はまだ登録されていない模様。(2023.5.5.現在)
ちなみに私のお気に入りは〈通小町〉。曲そのものが好きな上に、右上の方に「煩悩の犬」と思しきものが描かれており、ちょっと面白い。そして犬は普通にかわいい。敢えて載せないので、ぜひ探してご覧あれ。
そこそこ長くなってしまったので、今回の記事はこの辺で。
次回は利用者登録後に個人送信サービスを使用して閲覧できるものも少し含めて投稿予定。
『能樂圖繪』より「班女」
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